ペドロとイネスの悲恋物語・アルコバサ

「サンタ・マリーア・ディ・アルコバサ修道院」
リスボンの北約120km、アルコア川とバサ川の交わる場所にあるレイリーア県アルコバサという小さな町。

ここにはポルトガル王ペドロと王妃イネスの悲恋物語が語り継がれており、繊細で優美な彫刻が施された二人の棺が置かれている。

ヨーロッパ大陸の南西端部、ピレネー山脈以西の地中海と大西洋との間に突出したイベリア半島には15世紀以降スペインとポルトガルになったが、そこにいたる歴史は変遷してきた。

12世紀の中頃、現在のスペインにあったカスティーリャ王国からポルトガルの貴族が独立し、ポルトガル王国が誕生したが、カスティーリャ王国と良好な関係を築いていくことが重要だった。

そして14世紀になり、ポルトガル国王アフォンソ4世は、カスティーリャ王国との関係を強化するために、息子をカスティーリャ王の血を引く貴族の娘と政略結婚させた。

ところが、王子ドン・ペドロは、妻のコンスタンサ・マヌエルではなく、妻の美しい侍女イネス・デ・カストロの方に魅かれ、ここに物語が起きた。

両国関係を気にした国王は、イネスを遠く離れたコインブラのサンタ・クララ修道院に幽閉し、王子から引き離そうとするが、ペドロは、益々イネスに入れ込み、二人は愛し合うことになる。

一方、妻のコンスタンサ・マヌエルは、跡継ぎの王子を産んだ後、肥立ちが悪かったのだろうか若くしてこの世を去ってしまう。

ペドロは、イネスを近くに呼び寄せ、3人の子供ももうけた。国王アフォンソ4世が再婚を勧めても、当然ながら聞く耳を持ちません。

しかし、ポルトガルの貴族たちは、イネスがこのまま王妃になると、親族やその取り巻き貴族が力をもち、自分たちの地位が危うくなると考え、国王にイネスの暗殺を持ちかけた。

イネスの排除を迫られ、苦渋の決断を迫られたアフォンソ王は決断を下す。コインブラの涙の泉に王は刺客を送り、イネスを暗殺させた。

ペドロは彼女が亡くなった泉の、血にまみれた石に、彼女のかたきを打つことを誓い、国王に対して反乱を起こしたが、国を守らなければならないという母の説得で、国王と和解した。

しかし、国王がイネス暗殺の2年後にこの世を去ると、ドン・ペドロはペドロ1世として国王に即位し、すぐさまイネスの復讐を始めた。

2年間、怒りを胸の内に溜め込んでいたペドロ1世は、イネスを殺した3人の貴族をカスティーリャ王国で見つけ出すと、心臓をえぐり出すという残虐な方法で処刑しました。

そして、サンタクララ修道院に駆け付けると、イネスの墓を掘り起こし、ある儀式を執り行います。それは、彼女を正式な王妃として認めさせるための戴冠式でした。

家臣たちは、忠誠の証を見せるようとのペドロの命令に従い、イネスの遺体に口づけをし、ペドロは自らの手で王妃の証である王冠を彼女の頭に載せました。

ペドロの愛が深く刻まれたイネスの棺は、天使たちがやさしく寄り添い彼女を囲んでいます。そして、醜い獣に姿を変えられた暗殺者たちが棺を支えているのです。

今、サンタクララ修道院に安らかに眠る二人の棺は、ふたりの足が向き合うように並べられています。いつの日か、深い眠りから覚め再び起きあがった時に、ふたりが笑顔で向き合えるように。

と、ドラマチックなんだけど、少し重いというか、偏ってるようにぼくは感じました。


近くを流れるアルコア川

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