『果物、ナプキン、ミルク入れ』1881年
セザンヌは、リンゴと山の絵画を多く描いている。特にリンゴは、60点以上あり、山の絵は晩年に多く描かれていて、40点以上あるそうだ。
自分が納得いくまで、何度も何度も、描き直しをしたため、とても筆が遅かったとの伝説がある。どんなに時間がかかっても、文句を言わず、身動きもしない風景画や静物画を好んで描いたのも頷ける。
また、黙々とキャンバスに向かい、満足のいく仕上がりになるまで描き続けた結果、時にはセットした果物などが熟しきって腐ってしまったとのこと。そのせいもあるのか、熟したように不思議な雰囲気を醸し出している。
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若い頃は、画家を目指してパリに出てきたものの、酷評されることが多く、一度挫折し故郷へと戻ったようだ。当初はクロード・モネやピエール=オーギュスト・ルノワールらとともに印象派のグループの一員として活動していた。
しかし、1880年代からグループを離れ、独自の絵画様式を探求。世間的な評判、その頃の絵画の風潮などにまどわされることなく自分の理想とする絵を追求し続けた。
妻子を父親に隠していた時期は金銭面の苦労も多かったようだが、父の遺産を継いでからは生活苦に悩まされることもなくなり、絵を描くこと以外何もしないという徹底した日々を送れた。
『草上の昼食』1878年
ポール・セザンヌは、マネの「草上の昼食」をテーマに、何枚も描いたそうだ。尚、セザンヌに限らず、モリゾらも、「草上の昼食」を描いている。
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上の二枚はオランジュリー美術館。下の二枚はオルセー美術館。
『リンゴとオレンジ』1899年
セザンヌは、画家に共鳴していた批評家ギュスターヴ・ジェフロワに対して「リンゴでパリを驚かせたい」と語ったと言われている。本作は画家の対象に対する切実で、複雑な想いと表現が顕著に示された作品。
『女性とコーヒーポット』1895年
堅固に整えられた髪形が特徴的な家政婦の表情は労働者階級とは思えないほど威厳と真実味に満ちており、この労働者に対する称賛的かつ偶像的なアプローチはこの頃の画家の特徴らしい。
家政婦の身体の中心には衣服の襞が垂直線となって明確に描かれており、背後の壁や画面右側に配されるコーヒーポット、カップに挿されるスプーンと共に本作の垂直性を強調している。
セザンヌが友人エミール・ベルナールと交わしていた手紙の中で記した「自然を円柱、球、円錐によって扱い表現すべきである」という表現的信念が表れている。
(※記事はSalvastyle.comより引用させていただきました)
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